第36回例会では「人と現場が動くDX」と題し、株式会社マウンテンゴリラの井口社長から、現場起点で進める中小製造業DXの実践事例と将来展望について学びました。

9月30日の講義では「『カカナイ』で実現する中小製造業のDX」と題し、株式会社マウンテンゴリラの井口社長から、現場起点で進める中小製造業DXの実践事例と将来展望について学びました。
1.今回の個人的な感想
本講義を通じて、中小製造業のDXは高度なIT投資や専任人材がなくても実現できることを強く実感しました。特に、現場の「書く」「転記する」といった当たり前の作業を見直すことで、大きな生産性向上につながる点が印象的でした。DXが進まない原因は技術ではなく「人と現場」にあるという指摘は、中小企業支援に携わる立場として非常に示唆に富む内容でした。
2.今回の内容について
それでは今回の内容は以下のとおりです。
(1)教えてもらったこと
現場DXツール「カカナイ」は、紙やExcelで行っている作業をタブレット・スマートフォンに置き換えるオーダーメイド型電子帳票であるとのことでした。主な対象は、ノンデスクワーカーとし、テキスト入力を極力排した現場で使いやすいUI設計が重視されているようです。
社内SEがいない中小企業でも、テーマを伝えるだけで導入できる月額課金型のビジネスモデルを採用し、月額3万円から利用でき、改善スピードが速い点も大きな特徴とのことでした。
(2)この技術によって企業が得られるメリット
現場で入力したデータが即時にシステムへ反映され、リアルタイムな状況把握が可能になります。紙からの転記作業が不要となり、大幅な作業時間削減を実現でき、在庫管理や誤出荷防止など、品質向上とミス削減につながります。
また、スモールスタートが可能で、効果を確認しながら段階的に投資を拡大できます。将来的には生成AIと連携し、熟練者の判断を超える「匠超え」への展開が期待されます。
(3)導入にあたっての課題
現場から「紙の方が早い」「新しい操作が負担」といった心理的抵抗が生じやすい。特に、多忙な生産現場では、新しいツール導入の余裕がないケースが多いとのことでした。そのため、UIの工夫、推進役の設定、比較的余裕のある部門からの導入など、進め方の設計が重要となります。
(4)中小企業診断士が支援できること
現場業務を整理し、「どこからデジタル化すべきか」を明確にする支援が必要です。スモールスタートを前提とした導入計画の策定と、経営者への効果を説明することが求められます。
また、現場の抵抗を踏まえた導入ステップ設計や、推進役づくりの支援が必要です。中小企業診断士として、AI活用や将来展望も含めた中長期的なDXストーリーの構築を支援することが求められます。
3.まとめ
「カカナイ」によるDXは、単なるペーパーレス化ではなく、現場データを活かした経営変革への第一歩であると感じました。技術よりも人と現場に寄り添うことがDX成功の鍵であり、中小企業診断士の役割は今後さらに重要になると考えられます。今回の講義は、中小製造業DX支援の実践に大きな示唆を与える内容でした。


