第34回例会では、株式会社ミライノゲンバの渡部様から、現場を変えずに実態把握というお題でお話頂きました。

7月22日の講義では、株式会社ミライノゲンバの渡部様から、現場を変えずに実態把握という内容について学びました。
1.今回の個人的な感想
中小企業を取り巻く紙帳票の問題は根深く、例えば記載内容が乱筆で読めなかったり、担当者以外の人は略記された内容を把握できなかったり、といった俗人的な要素が原因で、現場の現状を把握することが難しくなってしまうことがあります。紙帳票を効率的に管理すること、また、経営上重要なデータを取り出すことができれば中小企業の経営状態をより良い方向に導けることは間違いないと考えます。そのためのツールとして今回ご紹介いただいた「ミライのゲンバ帳票」のようなサービスは、まさしく現場の困りごとを解決できる非常に有用な手段の一つであると思いました。
2.今回の内容について
それでは今回の内容は以下のとおりです。
(1)教えてもらったこと
製造現場における紙帳票依存の課題と、それを解決する「ミライのゲンバ帳票」の特徴をご紹介頂きました。日本の製造業は依然として約70%の現場が紙で記録を行っており、非効率な転記作業やミス、情報活用の遅れが大きな問題となっています。従来の電子帳票化は初期費用が高額で現場オペレーション変更を伴うため導入が進みにくい状況でした。これに対して同サービスは、紙の運用を大きく変えずにAIを用いて既存帳票を電子化し、手書きやワンタップ入力を可能にする仕組みを提供しています。導入後は生産性や品質管理能力が向上し、データ活用による工場全体の効率改善が実現できると学びました。
(2)この技術によって企業が得られるメリット
「ミライのゲンバ帳票」を導入することで、従来、紙帳票の中で使われずに眠っていた生産実績や品質データをデジタル化し、即座に分析・改善に活用できるようになります。結果として、記録や転記に要していた500〜6,000時間の工数削減が可能となり、人件費や管理コストを大幅に低減できます。また、転記ミスや記入漏れといった人的リスクが減少し、重大事故防止や品質安定に直結します。さらに進捗や能率の可視化により、営業・設計・現場間の連携が強化され、納期遵守率や売上向上にもつながります。現場作業を大きく変えずに導入できるため、従業員の抵抗感が少なく、持続的な競争力強化を実現できる点が大きなメリットです。
(3)導入にあたっての課題
導入にあたっては、現場環境や業務フローへの適合性を慎重に見極める必要があります。紙帳票は多部門が関与する複雑なオペレーションに組み込まれており、入力形式の多様性や作業習慣を尊重しつつデジタル化を進めなければ、品質事故や安全事故を招く恐れがあります。また、既存システムとの連携やデータベース統合をどう実現するか、ITリテラシーの低い現場従業員への教育やサポートをどう行うかも課題です。さらに、初期投資や運用コストをどう回収するか、経営層に対して投資対効果を明確に示すことが不可欠です。現場の理解と経営判断を両立させる準備が導入成功の鍵を握ります。
(4)中小企業診断士が支援できること
中小企業診断士は、まず現場の業務プロセスを可視化し、紙帳票に依存している領域とデータ活用可能性を整理する役割を担えます。その上で、AI帳票化の導入効果を定量的に試算し、投資対効果やコスト削減額を経営層に分かりやすく提示することが可能です。また、導入プロセスにおける現場抵抗の軽減策や教育計画の設計、ベンダーとの橋渡しも支援できます。さらに、収集データを活用した改善提案や新規事業展開への応用など、中長期的な経営戦略に結びつける助言も行えます。単なるシステム導入支援にとどまらず、経営全体の生産性向上と競争力強化を後押しできる存在となることが期待されます。
3.まとめ
今回は製造業の紙帳票問題を背景に、現場を変えずに導入できる「ミライのゲンバ帳票」についてご紹介頂きました。従来の電子化が抱えていた高額な導入コストの問題や運用変更リスクを回避し、直感的入力やAI電子帳票化で効率化と品質向上を同時に実現できる点が特徴です。導入によって工数削減や人的ミス防止が期待でき、データ活用を通じて売上増加や部門間連携強化にもつながると考えられます。ただし、現場習慣やシステム連携への適合が課題であり、投資対効果の明示が導入推進に不可欠です。中小企業診断士は現場分析から経営判断支援、導入後のデータ活用まで広範なフェーズで寄与できる立場にあります。今後、紙帳票からの脱却が競争力強化の重要な一歩になると考えられるため、本サービスの導入もそのための重要な手段の一つと成り得るでしょう。


